少ない負担で多くの情報を引き出す画像診断
心臓の血流や構造的疾患を調べる画像診断には、心臓超音波検査、心臓CT、心臓MRI、心筋シンチグラムがあります。これらは1回の検査が10〜30分ほどですが、少ない負担で多くの情報を引き出すことが可能です。特に放射線を使用しない心臓超音波検査や心臓MRI検査は、妊婦や小児でも安心して受けることができます。これらの検査は、1つの検査だけでは診断が困難な場合も、検査を組み合わせることでより正確な診断を行うことが可能となります。
各検査の特徴
心臓超音波検査
心臓超音波検査は、高周波数の超音波を利用し、心臓の様子をリアルタイムで画像モニターに映し出す検査です。プローブと呼ばれる超音波発信機を、肋骨の隙間に沿うように当てて行います。検査は横になったまま15~30分ほどで受けられ、放射線による被爆の心配がないので妊婦や小児でも安心です。
心臓超音波検査では、心臓の各部屋の大きさ、壁の厚さや動き、弁の状態などの構造や、血液の流れ方や流れる量を計測することで、心臓に潜む多くの病気を発見することや、心不全の状態を評価することができます。
経食道心エコー検査は、胃カメラのような細い管を飲み込んでいただき、体の内側から詳しく心臓の状態を観察する方法です。この検査は、弁膜症や先天性心疾患で外科治療やカテーテル治療を必要とする方が対象となります。検査時間は10〜15分程度ですが、当院では喉の局所麻酔を行った上で、静脈麻酔も用いて極力負担を軽減して行っています。
心臓CT
CT(コンピュータ断層撮影法)は、エックス線を使って身体の断面を撮影する検査です。従来から体内のさまざまな病巣を発見することができるCTですが、技術の進歩により心臓の詳細な評価も可能となりました。例えば、以前であれば心臓に栄養を送る血管である冠動脈を評価するためには、入院の上、心臓カテーテル検査が必要でしたが、現在は冠動脈CTを用いた外来検査が可能となっています。循環器疾患で最もよく知られている狭心症や心筋梗塞は、冠動脈が細くなったり閉塞したりすることで発症しますが、これらの疾患についても、胸痛などに対し冠動脈CTを行うことで簡便に確定診断を得ることが可能となりました。
心臓MRI
心臓MRI検査は、磁気の力を利用した画像検査です。放射線被曝はなく、心筋症の診断や、心臓の機能評価、冠動脈の評価が可能なため、被曝を心配する患者さんや、妊娠の可能性がある女性の方にも検査可能です。冠動脈評価の際、造影剤を使用できない方には造影剤なしでの評価も可能であり、その場合は心臓超音波検査や他の検査と組み合わせることで、診断精度を上げています。
心筋シンチグラフィー
心筋シンチグラフィーとは、静脈から放射性同位元素を注射し、心筋への血流や心筋細胞のエネルギー代謝を画像化し、冠動脈の血流低下や障害された心筋部位を診断する方法です。検査は安静に寝たまま行う方法の他、自転車エルゴメータをこいで行う運動負荷や、注射による薬剤負荷などの方法もあります。
対象患者さん
心臓超音波検査は、聴診器の代わりとも言われており、胸痛、動悸、息切れ、むくみなどの症状のある方、検診で異常を指摘された方など、ほぼ全ての方が対象となります。それ以外の検査は症状、心電図、心臓超音波検査を元に推測される疾患により選択されます。
画像診断で分かる主な病気を紹介します。
① 心臓の血流低下(心筋梗塞、狭心症など)
冠動脈(心臓の栄養血管)の狭窄や閉塞で起こる疾患です。冠動脈を直接描出する方法や血流分布を可視化する方法、心臓の壁の動きを見ることで間接的に評価することで診断を行います。
② 心不全
全身に必要な血液が十分に供給できなくなる状態です。心臓のポンプ機能や循環血液量、心臓内の血圧などを数値化し診断していきます。
③ 心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症など)
心臓の筋肉細胞レベルの異常で起こる病気です。先天的なものの他、他の疾患に合併して起こるものなどがあります。それらの病型分類を行います。
④ 弁膜症
心臓内の部屋を隔てる四つの逆流防止弁の異常です。弁膜症には血液が逆流する閉鎖不全症と、弁が開きにくくなる狭窄(きょうさく)症があります。弁自体に問題があるのか、他の原因により起こっているものなのかを判断し、内服治療または外科治療・カテーテル治療の判断を行っていきます。
⑤ 先天性心疾患
心臓の中を隔てている壁に穴が開いているなど、生まれつき心臓に形態異常があることで起こります。形態異常を見つけ出し、外科治療・カテーテル治療が必要かを判断します。
Q&A
Q: 痛みのある検査ですか?
A: 基本的には寝たまま行うことが可能なものがほとんどで、痛みは伴いません。造影剤や薬剤を使用する場合は注射が必要になります。
Q: 予め準備などは必要ですか?
A: 基本的に準備などは必要ありません。造影剤や薬剤を使用する場合には、検査前の食事はお休みしていただく必要があります。
Q: 当日検査をして結果が分かりますか?
A: 当日検査可能なものもありますが、予約が必要になる検査もあります。
Q: 入院は必要ですか?
A: 基本的にすべて外来での検査が可能です。