診療方針

当科は外科系へのテコ入れに伴って2004年9月に開設され、10年以上にわたって、増加する手術件数に対して全ての麻酔を専従麻酔科医が行う、という基本姿勢を軸に歩んで参りました。当科の活動は手術室における麻酔・全身管理、集中治療センター(ICU・CCU)の管理・運営、病棟での呼吸管理・術後鎮痛への関与・急変時の対応を主体としています。
手術室は5室を運用しており、年間1900件前後の手術のほとんどが全身麻酔で行われ、そのすべてを麻酔科が管理しています。多数の心臓・大血管手術や分離肺換気を要する手術、心疾患合併症例の腹部臓器手術など、麻酔科医の豊富な知識・技術を要求される手術が日常茶飯事に行われています。また術後鎮痛の面では体幹の手術において硬膜外麻酔だけでなく末梢神経ブロックの併用が広がりを見せ、鎮痛の質の向上に努めており、機材に関しても3D経食道心エコー、神経ブロック専用エコーなど最新の機器をそろえ、麻酔科医のモチベーションもアップし、より良い麻酔・全身管理に取り組んでいます。
集中治療センターは18床を運用しており、そのセンター長と副センター長を認定資格を持つ麻酔科医が担当して管理・運営面で中心的役割を果たしています。主として心臓血管外科の周術期患者において、毎日のカンファランスを通して外科医と共に術中から術後まで継続した管理を行い、特に呼吸管理・鎮痛・鎮静などの面からサポート出来るよう努めております。
昨今の手術件数の増加、患者の高齢化、ハイリスクな患者の増加などにより、麻酔の専門性はいやが上にも高まっています。患者の周術期に真摯な態度で向き合い、それがより満足のいくものになるよう、今後も研鑽努力を重ねて参ります。
先端医療への取り組み
「心臓に強い、心臓の強い」麻酔科医を育てる。
当院では年間300例を超える心臓大血管手術が行われており、その麻酔管理は勿論、術中経食道心エコーを全例麻酔科医が行い、その知見を広く世界に発信しています。2020年4月心臓血管麻酔専門医認定施設の資格を取得しました。
また昨今めざましい発展を遂げているカテーテル治療の全身麻酔も担当しており、特にTAVIはハートチームの一員として通算1000例以上の全身麻酔を担当しています。僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療、カテーテル的左心耳閉鎖術等麻酔科医が関与する治療はさらに多様化し、増加しております。
病院の性質上心疾患患者の麻酔は勿論心疾患患者の非心臓手術も盛んに行われているので、「心臓に強い、心臓の強い麻酔科医」に向けてトップレベルの症例数を経験する事ができます。

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3DエコーEPIQ7Gと多くのモニターを搭載した心臓血管外科専用麻酔器
集中治療を学ぼう
当院の集中治療センターは18床あり、中央部門として各科の重症患者の急性期治療に重要な役割を果たしています。その中で日本集中治療医学会専門医として責任のある立場で集中治療センターの管理運営に携わっています。様々な病態の治療に主治医グループとともに深く関わっていきながら集中治療を学ぶことができます。
また、当施設は日本集中治療医学会の専門医研修施設に認定されているので、ここで様々な症例を経験することで集中治療専門医への道が拓けます。
2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | |
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入室患者数 | 2967 | 2814 | 2633 | 2300 | 2149 |
(※2014年11月よりセンター整備のため4床減となっています)
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ICU朝カンファランスの様子と絶えず活躍する人工呼吸器・血液浄化装置
区域麻酔の広がり
近年抗凝固薬・抗血小板薬の服用患者の増加で、硬膜外麻酔を回避せざるを得ない症例が増えてきました。それに替わるものとして高画質超音波診断装置の導入により腹横筋膜面ブロック(TAPブロック)、肋間神経ブロック、PECS Ⅱブロックなどの末梢神経ブロックが飛躍的に増加しています。全身麻酔への末梢神経ブロックの併用により術中の侵害刺激に対する反応が抑制されるとともに、術直後の鎮痛にも大きく寄与します。
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術前麻酔外来
患者入院後に病棟を訪問しベッドサイドで診察・麻酔説明を行っていた従来の方法を縮小し、麻酔科外来にて入院前に行うことには以下の利点があります。
- 手術決定後早期での患者情報収集と追加検査・他科コンサルトの必要性決定
- プライバシー確保の上での十分な麻酔説明による患者教育と不安軽減
- 入院後の追加検査や手術延期の防止(周術期管理コストの改善効果)
消化器外科症例
2017年 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 |
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予定手術患者数 | 62 | 60 | 59 | 55 | 62 | 68 | 55 | 46 | 64 |
術前外来数 | 29 | 39 | 38 | 31 | 50 | 49 | 36 | 28 | 47 |
医療設備
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麻酔器
デスフルレンもあります。
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経食道心エコー
最新鋭機2台で
2列の心臓手術に対応。
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人工呼吸器
最新機種、あらゆるモードに対応。