診療科

スマートウォッチで心房細動を見つける

あなたのアップルウォッチで
心電図相談

(アップルウォッチApple Watchや携帯型心電計含む)

厚生労働省が2020年9月4日に米国アップルが提供するiPhone用「Appleの心電図アプリケーション(承認番号30200BZI00020000)」と、アップルウォッチの「Appleの不規則な心拍の通知プログラム(承認番号30200BZI00021000)」の二つのソフトウエアを”クラス2の医療機器”として認可し、2021年1月26日からアップルウォッチとiPhoneを使った心拍数計測、不整脈の検出が可能となりました。

昨年より当院 仙台厚生病院でもアップルウォッチを含むウェアラブルデバイスで検出された心電図を送付頂き我々が実際に波形を見ることによって(スマートウォッチ(アップルウォッチ)心電図相談)、心房細動含む不整脈が新たに見つかる方が増えています。当院で治療を受けられる患者さんですが、仙台市に限らず、宮城県をはじめとし青森、秋田、岩手、山形、福島と東北全土から広くお越しいただいております。やはり遠方の方にとって受診するには移動時間がかかりますので、こうした遠隔で行える診断補助は特に有益性が高いと認識しています。
ここでは、不整脈を見つける意義、ならびにアップルウォッチを使った心房細動の見つけ方について説明させていただきます。

不整脈を見つける意義

心房細動の有病率は高齢化社会に伴い増加の一途を辿っております(図 心房細動有病率)。

心房細動有病率

小坂ら (人間ドック36:539-544,2021)を改変

過去の疫学研究と比較すると罹患率も増加していますが、こちらは医療技術の進歩で以前よりも長時間の心電図が記録出来るようになってきたこと、健診率の上昇に伴い心電図を記録する機会が増えたこと、スマートウォッチや携帯型心電計アップルウォッチを含むウェアラブルデバイスが出現したこと、などの複合的な要因の結果ではないかと判断されます。もちろん、食の欧米化や肥満率の上昇といった背景も一因として考えられます。ウェアラブルデバイスで発見する意義の高い不整脈としては心房細動が挙げられます。専門治療に説明文を載せてありますので、一読してください。
心房細動は決して放置してはいけない不整脈で、人によっては症状がなく気がつかずに病状が進行してしまったり、突然脳梗塞を来したりするリスクがあり、正確かつ早期に発見する事が大事です。

海外のデータとなりますが、アップルウォッチに関しての報告として有名なものとして、Apple Heart Study (N Engl J Med. 2019; 381: 1909-17.) が挙げられます。42万人のアメリカ人が参加した臨床研究です。42万人の方の中で、アップルウォッチから不整脈通知を受けた方は2161人(0.52%)で、そのうち1376人(64%=1376/2161人)の方が追加の検査を受けられました。最終的には心房細動と新規診断を受けたのは404人(18.7%)となります。42万人のうち404人で新規診断ですので、非常に少ない数(約0.1%)に思えるかもしれませんが、この研究の参加者の平均年齢は41歳ですので、上に提示した日本人の有病率から予想される値とほぼ同様かと思われます。そのため、より高齢の方を対象に行えば、より多くの心房細動の方の発見につながると判断されます。なお、この研究の重要な点としては、今までに心房細動と指摘を受けていなかった方の42万人のうち、モニタリング期間平均117日のたった4ヶ月の間に404人の方が新たに心房細動の診断を受けた事にあります。不整脈というのは病気の特性上、心電図を記録した時に不整脈が起きていなければ診断がつかないことが良くあります。よく、ドキドキして病院行ったけど、受診した時には症状が治まってしまって何もないと言われる、といった方が簡便に不整脈を検出するために非常に有用なデバイスと考えられます。

計測方法

アップルウォッチ(および類似の腕時計型デバイス)の不整脈(主には心房細動)検出は2つの機能をうまく使い合わせて行います。

01 脈波計測

手首に接する部分の光は、光学式心拍センサーによるものです。時計の背面から光を皮膚に当て、その反射光を調べることで血管の膨らみ具合を検出することができます。アップルウォッチでは毎秒数百回のLEDライトを点滅させ、心臓が1分間に鼓動を打つ回数、すなわち心拍数を計測します。

02 心電図計測

時計の本体裏面には電極が内蔵されていて、心臓の活動にともなって発生した微小な起電力を電極によって誘導し、心電図データを収集します。
仕組みは病院で記録する心電図と同じで、心房細動の診断も多くの場合可能です。

アップルウォッチを使った心房細動の見つけ方

アップルウォッチの心電図計測方法に関してはアップルのホームページに記載がありますので参照ください。 心電図は文字通り心臓の筋肉を動かす電気の流れを体の表面から記録したものになります。その他の筋肉も電気によって動くため、体動(体が動いたり、震えたり)の影響を大きく受けますので、自宅で血圧を測定するときのように、腕時計のベルトをしっかり締め、腕を机の上に置いて動かない状態にしてから心電図記録をするようにしてください。

アップルウォッチで記録した心電図でも、オムロンから販売されている携帯型心電計でも、またその他のもので記録された心電図でも、心配なようであれば気軽に画像を添付くだされば返答させて頂きます。ただ、あくまでも診断補助デバイスとしての位置付けで、心電図に関しての相談になります。何か付随する症状がある時は、当院でもお近くのかかりつけでも良いので必ず受診してください。

2つの不整脈検出パターン

不整脈(心房細動)の見つけ方には2つのパターンがあります。
心臓の鼓動をつかさどっている微小な電気信号のタイミングと強さを記録し、
「不規則な心拍リズム」の通知を受けることで症状の乏しい心房細動も見逃しにくくなります。
また「動悸などの症状」を自覚した時に、心電図を取ることで心房細動が発見できます。

1
PPG不規則脈波通知を受け
2
動悸など、症状がきっかけで
心電図を記録する
「不規則な心拍」または「不快な症状を自覚」して
心電図を記録するパターンがあります。