感染対策部門(ICT:Infection Control Team)
基本方針
平成15年に「2/21宣言;現実的に考えうる最高水準の感染対策構築を目指し、Clostridium difficile対策においてはモデル病院とされるようなレベルを目指す」を具現化し、感染の予防対策や診断・治療法に関する適切な情報提供やアドバイスを行っていく部門として開設されました。
Infection Control Team(ICT)は、病院における感染管理の実動部隊として最も重要な機関です。構成メンバーは、ICD・ICN・看護師長(看護部委員長)・薬剤師・検査技師・事務員・および各部署のリンクナース等各職種から構成され、さらに外部専門家顧問をお招きし、活発に活動しています。
活動内容の紹介
1 教育・啓発・連携
ICTは、すべての医療従事者の教育・啓発による感染管理の意識の向上が、感染管理において最も重要であると考えています。したがって、感染管理の教育の機会を設け、積極的に広報・啓発しています。
1-1 地域連携
平成24年度の診療報酬改定に伴い、地域の病院と感染対策上の連携を開始しました。当院は感染防止対策加算1および感染防止対策地域連携加算を取得しています。これにより、合同カンファレンスやお互いの施設ラウンド、感染対策上の相談対策の構築等ますます地域の横の拡がり・繋がりに力を入れています。
- 感染防止対策加算1:感染防止対策加算2の届出医療機関と年4回以上の合同カンファレンスの開催
- 感染防止対策地域連携加算:感染防止対策加算1の届出医療機関と感染防止対策の体制について年に1回以上、互いの医療機関に赴いて相互に評価する。
- 社団法人 全国社会保険協会連合会 仙台社会保険病院
- 社会医療法人 将道会 総合南東北病院
- 財団法人広南会 広南病院
- 仙台逓信病院
- 財団法人 三友堂病院(山形県)
1-2 地域への教育・啓発
感染管理においては、地域が連携し協力して感染対策を推進していくことが重要となります。仙台厚生病院では従来より、地域医療支援病院として、地域の医療機関・社会福祉施設と連携して医療を行っています。
地域における感染対策に関する情報共有が重要と考え、登録医・社会福祉施設対象の『院内感染対策セミナー』を開催し、地域の連携を深め、地域ぐるみでの感染対策を目指しています。
また、いくつかの社会福祉施設では、当院のICD、ICNが訪問し、ICTラウンドおよび改善支援を行っております。
登録医・社会福祉施設対象の院内感染対策セミナー開催
感染対策における地域への情報提供、地域ぐるみで感染対策に取り組んでいく基盤づくりを目的としています。また、医療法改正に伴う年2回の感染対策に関する職員の勉強会開催義務に活用していただくため、毎年2回開催しています。
日程 | 内容 | 講師 | 参加者 |
---|---|---|---|
平成23年 6月9日 |
テーマ: 『災害時における感染対策』 講演1: 「東日本大震災時の当院における感染対策を振り返って」 講演2: 「災害時における感染症および感染対策」 概要 |
1:仙台厚生病院 統合医療安全管理室 感染管理認定看護師 目黒美保 2:東北大学大学院 医学系研究科 感染症診療地域連携講座 國島広之先生 |
64施設 97名 |
平成23年 12月8日 |
テーマ: 『感染対策の地域連携-地域で感染症保有患者をどのように受け入れるのか-』 講演1: 「診療所・介護施設での耐性菌保有患者の受け入れ―院内感染対策マニュアル作成支援も含めて― 」 講演2: 「結核患者の地域での受け入れ」 |
1:東北大学大学院 医学系研究科 感染症診療地域連携講座 國島広之先生 2:仙台厚生病院 副院長兼 呼吸器内科主任部長(ICD) 本田芳宏 |
47施設 65名 |
平成24年 6月14日 |
テーマ: 『医療従事者に必要な感染症対策―法令遵守から職業感染予防まで―』 講演1: 「ワクチンで予防できる感染症」 講演2: 「自分自身を守るための感染症対策」 |
1:東北大学大学院 医学系研究科 感染症診療地域連携講座 國島広之先生 2:仙台市 青葉区保健福祉センター 管理課企画係 斎藤政浩先生 |
58施設 95名 |
平成24年 12月13日 |
テーマ: 『院内感染対策―こんなとき、どうします?―』 講演: 「介護施設へのアンケート調査から浮かび上がった課題」 概要 アンケート内容 講師資料 |
1:東北大学大学院 医学系研究科 感染症診療地域連携講座 國島広之先生 |
51施設 76名 |
無床診療所等における感染対策マニュアル(ひな型)
感染症は地域で伝播する特殊性から、地域医療の中核である診療所と基幹病院がともに連携して、より良い感染症対策を行うことが重要です。
今回、東北大学大学院 感染症診療地域連携講座(当院感染対策アドバイザー國島先生)において、仙台厚生病院地域連携セミナー向けに作成したマニュアルをもとに、地域の皆さまと共同で発行しました。我が国でも初めての試みですので、ぜひご活用ください。
社会福祉施設へのICTラウンド
セミナーにご参加いただいた施設や、ご希望・ご協力いただける施設へICTラウンドを実施しております。実際に施設をラウンドさせていただき、問題点や改善策を一緒に検討することを目的とし、定期的に実施しています。
社会福祉施設・連携医療機関での研修
依頼があれば、院外での研修会も開催しております。
1-3 職員への教育・啓発
新入職員研修
毎年4月第1週に全職種の新入職員を対象に、感染管理に関する新入職員オリエンテーションを実施しています。
医療法に基づいた院内感染対策研修の実施
医療法により年2回の研修が義務付けられています。全職員対象に実施し、研修・テスト形式で実施しています。
日程 | テーマ |
---|---|
平成23年 4/11~4/18 |
『手指衛生のタイミング』 |
平成23年 8/24~9/1 |
『病院から出るゴミの分別について』 |
平成24年 3/22~3/29 |
『当院でのインフルエンザの対応方法について』 |
平成24年 11/30~12/10 |
『針刺し』 |
平成25年 3/13~3/25 |
『知ってほしい結核のこと~空気予防策~』 |
各部署での研修
各部署からの研修依頼があった場合やラウンドなどを通してICTが必要と判断した場合など、随時研修を実施しています。
開催月 | テーマ | 対象者 |
---|---|---|
H23.2 | 環境整備 | ナースエイド |
H24.6 | 薬剤耐性菌について | 看護部感染防止対策委員会リンクナース |
H24.7 | N95マスクの使用方法 | 医事課職員・防災センター職員 |
H24.8 | 特定抗菌薬と血中濃度採血 | 看護部感染防止対策委員会リンクナース |
H24.12 | 感染性胃腸炎と環境清掃 | ナースエイド |
H25.1 | モービルCCUにおける感染対策 | モービルCCUを運転する事務職員 |
看護部リンクナースによるニュースレター「おてがみ」の発行
ICTの看護部リンクナースが持ち回りで、時事情報やトピックスなどニュースレター「おてがみ」として院内に発信しています。
- 2012年初夏
- 2012年秋号
- 2012年冬号
1-4 その他研究活動
東北感染制御ネットワーク研究会や各種学会への参加、研究発表など院外での活動も活発に行っています。
第27回日本環境感染学会発表演題
- 「吸引処置時における標準予防策の遵守率調査」
- 「震災時における感染対策に関する検討」
- 「感染対策マネージメント向上を目的としたICTラウンド評価」
- 「当院における感染対策に関わる地域連携活動について」
- 「病院における感染経路別予防策のかかわる個室整備について」
第28回日本環境感染学会発表演題
- 「高齢者施設における感染対策の現状に関するアンケート調査」
- 「疥癬の集団発生に対する対策と課題」
- 「標準予防策におけるディスポエプロンの使用状況について」
- 「リンクナースをサポートする『ICTジュニア』を導入して」
- 「速乾性手指消毒剤払出量増加およびその要因について」
- 「血液培養より分離された緑膿菌の感受性について」
- 「血液培養より分離されたESBLs産生菌について」
- 「Clostridium difficle関連下痢症における検査室とICTとの連携について」
その他論文
- 沼田 昇,伊藤光子,熊谷正憲,本田芳宏,國島広之,賀来満夫
Clostridium difficileのtoxin Bの検出法の検討. 仙台市衛生研究所報 2008;37:64-67. - Kunishima H,Yamamoto N,Kobayashi T,Minegishi M,Nakajima S,Chiba J,Kitagawa M,Hirakata Y,Honda Y,Kaku M
Methicillin resistant Staphylococcus aureus in a Japanese community hospital:5-year experience.
J Infect Chemother 2010;16:414-417. - Kunishima H,Chiba J,Saito M,Honda Y,Kaku M
Antimicrobial Susceptibilities of Clostridium difficile Isolated in Japan.
J Infect Chemother 2013 Jan 22.[Epub ahead of print]
2 ICTラウンド
毎週水曜日にICTメンバー(医師、看護師、検査技師、薬剤師、事務員など)で各部署をラウンドし、現場で感染管理上の問題点がないかを多職種の目で確認・検討しています。
また、院内をくまなくラウンドするため、ICD・ICN・検査技師等少人数でのラウンドを週2回および必要時に実施しています。
3 Clostridium difficile対策
我が国におけるClostridium difficile関連腸炎は、明らかでない部分も多いのが現状です。抗菌薬を使用する中で下痢症をきたす場合が多くみられるため、当院では下痢症状出現時には積極的に検体を提出することを強く推奨しており、標準予防策および接触予防策の遵守に力を入れています。
4 職業感染対策
安全な就業条件の確保は、病院の最低限の責務です。職業感染対策においては、ワクチンにより予防可能な感染症については積極的に無償で検査・接種を行っており、安全器材についても導入を行っています。針刺し・切創、体液曝露の事例報告管理を行っています。
職員に対するワクチン
小児感染症(麻疹・風疹・水痘・ムンプス)、B型肝炎ワクチン、インフルエンザワクチン
5 サーベイランス
感染管理部門では、感染管理コンプライアンスの向上を目的として、通年のサーベイランスを行っています。現在、すべての術後患者を対象に医療関連感染すべてを網羅的に把握しています。
術後感染症サーベイランスの実施
手術部位感染症、血管カテーテル感染、尿道留置カテーテル感染症、肺炎、人工呼吸器関連肺炎、下痢症の6項目についてNNIS定義に準拠して実施
鼻腔MRSAスクリーニング・糞便ESBLsスクリーニング
転入院患者および術前患者を対象とする
6 患者への感染対策の啓発
感染対策は職員のみならず、患者さん・患者さんのご家族のご理解・ご協力が必要です。
そのため、患者さんや来院者に向けての情報提供として感染対策についての院内放送やポスターの掲示を行っております。
7 その他
- コンサルテーション
- 抗菌薬の適正使用状況の把握(薬剤部との連携)
- 有意菌の検出状況の把握(検査部との連携)・感染発生報告書
- マニュアルの追加・改訂 ICTからのお知らせの発行
- アルコール消費量の把握と各部署へのフィードバック