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日帰りで可能、低侵襲な下肢静脈瘤治療

下肢静脈瘤は足の血管の病気です。美容の問題、つまり『見た目』の問題と思われがちですが、こむらがえりの症状を引き起こす原因や傷が治らない原因にもなっています。自然に治るということはなく、段々と悪くなる病気です。治療しなくてもすぐには困りませんが、いつかは症状が出てくるため、適切なタイミングでの治療が必要です。ところが、いざ病院に行こうとしても、「皮膚科」なのか「整形外科」なのか、何科を受診したらいいか迷われる方も多いかと思います。治療をしようと思ったのであれば、当院循環器内科「静脈瘤外来」を受診ください。下肢静脈瘤の状態や、年齢や生活習慣に合わせ、相談しながら、最適な治療をご提案致します。

下肢静脈瘤検査治療の概要

疾患の概略

血管には「動脈」と「静脈」があり、心臓から出た血液は、動脈から全身にいきわたり、静脈を経由して心臓に戻ります。下肢静脈瘤は足の血管の病気で、皮膚の表面を走る「表在静脈」がコブのように膨らんだ状態を言います。静脈には「弁」と呼ばれる逆流防止機能があり、血液が重力に従って足の方に戻ってしまうのを防いでいます(図1左)。この弁が壊れると血液が逆流し、その下の静脈に血液が溜まってしまいます。この状態が長年続くと徐々に静脈が太くなり、さらに太くなると静脈はコブのように膨み、グネグネと蛇行し、この状態が「下肢静脈瘤」と称されます(図1右)。下肢静脈瘤は見た目が悪くなるだけでなく、足にたまった血液が血液のかたまりを形成したり、炎症によってかゆみ、色素沈着などの症状を引き起こしたり、最終的にはなかなか治りにくい潰瘍を形成します。診断は、問診や見た目などの視診、皮膚を触る触診に基づき、最終的には原因となる血管を確認するため「超音波検査」で診断します。

対象となる患者さん、症状

下記のような症状は静脈瘤が原因で起きていることがあります。

・ボコボコと血管が出る

・夜中に脚がつる

・脚がむくむ、かゆい、だるい

・脚に発疹、潰瘍がある、皮膚が茶褐色になっている

下肢静脈瘤は日本人の約10人に1人が有しているとされ、下肢静脈瘤は進行性であることから加齢とともに有病率が高くなると言われています。一般的には下肢静脈瘤は女性に多く、妊娠・出産を契機に発病することが多いとされています。また長時間立ち仕事の方(美容師、調理師など)や高血圧、糖尿病の方なども注意が必要です。

治療方法

治療は①血管内治療(血管内焼灼術、塞栓術)、②硬化療法(こぶにに薬を注射)、③高位結紮術(静脈をくくる)、④弾性ストッキングがあります。現在当院では最も治療効果が高く、日帰りでも行える①血管内治療をメインに行っています。2011年にレーザー、2014年より高周波(ラジオ波)による血管内焼灼術(図2左)、2019年より医療用接着材(グルー)による血管内塞栓術(図2右)が保険適用となりました。血管内焼灼術は静脈に細い管(カテーテル)を入れ、内側から熱を加え、原因となる血管を塞いでしまう治療です。一方、血管内塞栓術は静脈にカテーテルを入れ、静脈の内側を医療用接着材で接着してしまう治療です。特に血管内塞栓術の傷口は小さな穴一箇所のみで、術後の運動制限はほとんどなく、すぐに普段通りの日常生活を送ってもらうことが可能です。最も低侵襲で安全な血管内治療で、保険適応であり、日帰りでの治療が実現できます。当院では2016年5月に「血管内治療実施施設」の認定を受け、2017年2月より治療開始、2021年12月に治療件数700件に到達しました。また血管内治療だけではなく、病状、年齢、普段の生活習慣に合わせ、そのほかの治療も組み合わせながら、最適な治療方を決定しています。

Q&A

Q: 日帰りでの治療は不安なのですが?

A: 日帰りのみではなく、1泊2日でも可能です。患者様のご希望に合わせ対応していきます。また治療後は1週間後、1ヶ月後、6ヶ月後に経過観察のための外来を予定しています。


Q: 血をさらさらのお薬(抗血小板剤、抗凝固薬等)を飲んでいても手術できますか?

A: 血管内治療のため極々小さい傷から治療可能ですので、血をさらさらのお薬を内服していても大きな問題なく治療することができます


Q: 治療が受けられないのは、どのような場合ですか?

A: 血管内治療に関しては、血栓症のリスクの観点から自己免疫性疾患(ベーチェット病、降リン脂質抗体症候群、炎症性腸疾患等)の方、血栓症の既往の方、悪性疾患の治療中の方、ホルモン剤内服中の方はカテーテルでの治療は見送った方が安全と考えます。そういった場合でも弾性ストッキングや高位結紮で治療していくことは可能です。




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