当院のがん診療
放射線治療
放射線治療の概要
放射線治療は、手術・抗がん剤とならぶ、がん三大療法の一つです。患者さんへの身体的負担が少なく、しかも機能・形態の温存を可能にする優れた治療法です。そのため、高齢者への治療はもちろんのこと、仕事をしながら外来通院での治療も可能です。
放射線治療は局所療法であり、疾患に応じて様々な方法があります。治療目的は病巣部に放射線を照射することによりがん細胞を死滅させ、周囲臓器の機能・形態を温存することです。また、がんを治癒するための根治治療だけでなく、痛みの軽減を目的とした緩和治療もおこなわれています。
放射線療法は放射線単独で行う場合もありますが、現在は複数の治療法を組み合わせた「集学的治療」が主流となっています。
当院の特徴
当院は2014年5月に医療用直線加速装置(リニアック)をElekta Synageyに更新し、外部放射線治療を行っています。さらに、2016年から放射線治療専門医2名(常勤1名、非常勤1名)体制で診療にあたっています。特に、肺癌、消化器癌を中心に集学的治療を行っております。また、乳癌の術後照射の受け入れも積極的におこなっております。
放射線治療について
通常1日1回、疾患および症状に応じて数日から1ヶ月半程度です。1回の放射線照射は数分程度で、照射中に患者さんが痛みや熱などを感じることはありません。治療室の滞在時間は、照射部位の位置合わせ、画像確認を含めると15分程度の時間を要します。
放射線治療の進め方
- DVDによる事前説明
DVDを用いて、放射線治療の目的、治療までの流れ、注意事項などをわかりやすくご説明いたします。一度ご覧いただくことで、初回の診察時でも安心して診察を受けやすく、ご理解が深まります。
- 診察
はじめに、放射線治療専門医が治療方針決定のための診察を行います(火曜日または木曜日の午後)。緊急性を要する患者さんは随時対応しております。特に、治療開始前に患者さんならびにご家族に治療目的、期待される効果、治療方法、副作用などについて詳細に説明させて頂きます。放射線専門医は常駐しておりますので、診察日以外でも疑問や不安などありましたら再度ご説明することも可能です。
- 治療計画用CT撮影
放射線治療は、X線CT撮影を用いた放射線治療計画(詳細は下段に記載)が必要となります。そのため、X線CT撮影を実際に治療を行う体位にて撮影します。撮影前後に体にマジックで基準となる”しるし”を皮膚に書きます。照射治療終了まで消さないよう注意してください。また、必要に応じて照射部位の位置精度を担保するために、固定具を作成する場合があります。
- 放射線治療計画
放射線治療医が三次元治療計画装置(Pinnacle)を用い、撮影した計画用CT画像とPET-CT画像、MRI画像などを参照し副作用を低減し治療効果を得るために放射線の線量分布を計算します(治療効果を最大限に高め、同時に周辺の正常組織の副作用を極力抑制することを目的とした治療計画を作成します)。
- 治療計画検証
照射する放射線の量を確認するため、放射線治療スタッフがMU検証装置(Radcalc)で計算、または吸収線量を実測し治療計画の検証を行います。また、必要に応じてフイルムを使用して、照射範囲の確認を行います。
- 照射(治療)
検証された治療計画を放射線治療情報管理システムにおいて管理、運用し照射を行います。照射位置照合装置(XVI)にてX線撮影、またはCBCT(コーンビームCT)撮影を行い、照射位置の微調整を行うことによって高い位置精度を担保した照射を可能としています。治療室内には患者さんの状況を確認するためのカメラとマイクが設置されております。緊急時には、体を動かすと危険ですので、声に出したりなど合図でお知らせください。直ちにスタッフが対応します。
放射線治療期間中の経過観察
照射期間中は週に一度(毎週火曜日または木曜日、午後)放射線治療医による診察を受けて頂きます。また看護師、放射線技師が毎日患者さんの状態をお伺いいたします。診察以外でもご希望があれば対応致します。体調の変化等がありましたらお知らせください。
副作用について
放射線治療は副作用を伴う場合があります。皮膚炎や粘膜炎、倦怠感など照射期間中に発症する急性期障害は照射終了後数週間の間に回復あるいは軽減します。照射終了後数ヶ月から数年経過してから発症する晩期障害は難治性であり十分な注意が必要ですが、障害の発現をできるだけ抑制するために正確な治療計画と照射を行っています。照射部位に応じて症状や発生頻度は異なりますので、初診時に治療医、看護師から詳しく説明致します。
治療中、治療後のケアについて
放射線治療中は普段どおりに生活していただいて構いませんが以下のことを心がけるようにしてください。
- 十分な休息や睡眠をとるようにしてください。
- くしゃみ、咳が出ると照射部位が定まらないため風邪をひかないようにしてください。
- バランスのとれた栄養のある食事をとってください。照射部位によっては、刺激物等が制限される場合があります。
- 入浴は皮膚に刺激をあたえない様に熱めのお湯や温泉は控えてください。また、体のマークが消えないように十分に注意してください。
- 照射部位に直接日光が当たらないようにご注意ください。
- 治療終了後も放射線による効果、副作用の観察が必要ですので、定期的に医師の診察を受けてください。
その他、照射部位や治療方針により放射線による副作用が異なりますので診察時に詳細な説明をいたしますが、不明なことや不安なことがあれば遠慮なくスタッフにご相談ください。
使用装置紹介
放射線治療装置 Elekta Synergy
IGRT(画像誘導放射線治療)およびSRT(定位放射線治療)を行っております。
三次元放射線治療計画装置 Pinnacle3
安全で高精度な治療計画を実現します。
放射線治療計画用CT装置
Aquilion 64
(Aquilion ONE VEを用いて呼吸性移動を考慮した4DCT撮影も可能)
放射線治療情報システム KRatis(KOSEKI)
KRatis(クラティス)は照射情報、治療スケジュール、会計、統計等の統合管理を行うシステムです。バーコードを使用した照射回数チェックカードで、患者誤認を防止しております。
放射線治療実績
治療実績(のべ治療計画人数)
2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|
肺 | 143 | 202 | 195 |
縦隔 | 1 | 2 | 0 |
乳腺 | 2 | 5 | 3 |
食道 | 9 | 18 | 15 |
大腸 | 0 | 3 | 6 |
直腸肛門 | 11 | 22 | 14 |
胃 | 6 | 8 | 5 |
肝胆膵 | 22 | 31 | 20 |
その他 | 0 | 0 | 3 |
合計 | 194 | 291 | 261 |
「2023年3月時点」